今回のアンコール上映に寄せて、宮沢章夫さん(劇作家、演出家、小説家)からコメントをいただきました。
「光栄」の一語につきる文面です。ご一読のほどを、よろしくお願いします。

宮沢章夫

「あれは二十年以上も前の、なくなってしまった中野の武蔵野ホールという映画館だった。不思議な体験をした。たしかに私は映画を観ている。それはとても美しい映画だった。とはいっても、軽い気持ちで書くような「美しさ」という言葉が持つ単純な意味ではない。映像は、美しさと同時に、きわめて強い過剰さにあふれ、ふだんの生活のなかで、つい目を逸らしてしまうようなものたちに向かって、またべつの方向から照明をあてるように感じたが、だからといって、「美化」とはけっしてちがう。対象に向かって松井良彦は、足をひとつ踏み出し、身を寄せ、まっすぐ見つめる。私がふだん、つい目を逸らしてしまうのは、対象が特別な美しさによって彩られているからだと映像が語る。だから、映画を観るのとは、なにかべつのことを体験しているように思えた。自分のなかにあるいくつかの、あたりまえのことを壊すような映像の力量におののいたからだ。かといって、過剰な表現は、制作された時期から数年後、一時的に流行ったグロテスクな表出、身も蓋もない毒と呼ばれるものらを露悪的に語ること、あたかもそれが、かっこいいことをしているように勘違いしていた者らのふるまいとはちがう。作家はあきらかな確信を持って、侏儒の女性と自分を同じ地平に置く。だから、侏儒の女性の姿を映像にとらえたとき、彼女によって映画は、観る者を強く刺激する輪郭が与えられた。
だから美しかった。
私が中野の映画館でこの作品を観たのは、何度目かの再上映だったはずだが、その時期、つまり九〇年代の半ば以降、いくつもの不幸な災害や事件を受けて、街が強制的に「美化」された。その本質の意味を、『追悼のざわめき』は予見していたかのようだ。目を逸らすような現実をどこかに隠してしまうような時代が来た。だが隠されたそれこそが、正しい意味での美しさなのだと作品が教えてくれる。」(宮沢章夫)

宮沢章夫さんとのトークショー:12月5日(土)の上映後。

【上映情報】
映画『追悼のざわめき』
日程 : 2015年12月5日(土)~12月11日(金)
タイムテーブル : 連日 20:30~
料金 : 前売り¥1,000- 当日¥1,500-
映画館 : 新宿・K’s cinema(東京)

【トークショー】
12月5日(土)  宮沢章夫(劇作家、演出家、小説家) ×  松井良彦(映画監督)
12月9日(水)  森下くるみ(文筆家、女優) ×  松井良彦
12月11日(金)  仲井まみ子(主演女優) ×  松井良彦
※ 各日、上映後に催されます。

新宿・K’s cinema  http://www.ks-cinema.com/
〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目35-13 3F  TEL:03-3352-2471 FAX:03-3352-2472

 

【Screening information】
The movie “The Noisy Requiem” (No English subtitle)
Schedule :  2015, December 5 (Sat) – December 11 (Fri)
Timetable : 20:30 of every day

【Talk show 】
December 5 (Sat)  :  Akio Miyazawa (playwrighter, stage director, novelist) × Yoshihiko Matsui (movie director)
December 9 (Wed)  :  Kurumi Morishita (wrighter, actress) × Yoshihiko Matsui
December 11 (Fri)  :  Mamiko Nakai (leading actress) × Yoshihiko Matsui
※ After screening, the talk show is held.

Charge  :  Advance ticket ¥1,000-  Today’s ticket ¥1,500-
A movie theater  :  K’s cinema (Shinjuku, Tokyo)  http://www.ks-cinema.com/